第5回

ひたすらにギャルゲーの感想を書き連ねていく本企画、第5回目。

今回は番外編的ですが、個人的にPS屈指の名作である「夕闇通り探検隊」を紹介。ギャルゲではありませんが悪しからず。

夕闇通り探検隊:紹介

PSで有名なプレミアソフト

古くから「都市伝説」をテーマとした作品は数多くありますが、その中でもカルト的人気を誇るのがこの「夕闇通り探検隊」。

流通本数の関係か、2010年頃より中古価格が高騰し、2020年時点では3万円を超える価格となることもあるようです。

1999年に発売されたとあって、世紀末であった当時特有の雰囲気が随所に見受けられます。同メーカーの「トワイライトシンドローム」などと同じく、PS作品で多々感じることができる「90年代後半のゲーム」感が非常に強いのが本作の特徴でしょう。。

名作と言われる所以

この作品の素晴らしいとことはいくつもあるのですが、様々な切り口から考察ことがポイントではないでしょうか。例えば中心テーマである都市伝説だったり、土地に住まう神々の伝承だったり、中学生の主人公たちのリアルな生活・人間模様だったり。

都市伝説は本格的なホラー調のものから、くだらない噂話レベルのものまであり、その落差も楽しめるポイントです。このように、プレイの度に色々な楽しみ方ができるのが名作たる所以ではないでしょうか。……システム的に集会プレイが辛い部分もありますが、それはご愛嬌。

物語の本筋となるのは陽見市に伝わる「陽見七神」のお話ですが、今回は主人公たち、特にサンゴの人間関係、青春模様を考えてみます。

夕闇通り探検隊:感想

少年少女の青春模様

主人公となるのは、中学二年生の少年少女3人。成績優秀だが押しに弱いナオ、その幼馴染で気が強い文学少女のサンゴ、ナオが憧れる不思議少女のクルミ。この3人が放課後に犬の散歩を重ね、市内の都市伝説を調査していくこととなります。

元々はナオがクルミを誘うための散歩でしたが、それを妬んだサンゴも参加し、結局は3人で行うこととなりました。

序盤は分かりにくいですが、サンゴはゲーム開始前から幼馴染であるナオのことを気にかけていたのでしょう。しかしサンゴ自身は、恋愛絡みでトラブルを起こしている姉への嫌悪感から、自分の女性らしさを表に出さないよう別の名前を名乗っています(注:彼女の本名はマユ)。

物語中盤、サンゴは恋愛に興味も示さない自由奔放なクルミについて、ナオとの仲を取り持とうとする一方で、クルミが「いなくなる」ことを望んだことが示唆されていたりと、一貫性のない行動をしているように思えます。

サンゴの中には「好きなナオが(クルミと)幸せになって欲しい」と思う気持ちもありつつ、「美人で可愛いクルミには敵わないからいなくなって欲しい」という願いも共存しており、非常に苦しい心中であったのでしょう。

このような、自分の中でも折り合いのつかない想いというのは思春期ではよくあることですが、成長するに連れて失われていくもの。この点を上手く描いているのは素晴らしい。

成長するということ

そして、物語の最終局面。「陽見七神」との関わりや多くの都市伝説、同級生との確執と決着を乗り越えたナオとサンゴは、序盤と比べ精神的に大きく成長したのだと思います。

サンゴは一時的に自分の殻に閉じこもってしまいますが、自問自答の末、ナオのいる場所へと駆け付け、結果的に彼の危機を救うことになります。

好きな娘の為に恐怖と向き合い、クルミの望みのため勇気ある決断をしたナオ。逃げることを止めて今の自分を受け入れ、未来へ進むことを選んだサンゴ(マユ)。

夕暮れをナオとサンゴ(マユ)が眺める最後のシーンでは、ふたりともクルミと陽見七神の関わりは理解していたはず。そのためマユはナオの言うことを理解しているはずなのですが、「過去は忘れて未来の自分を見てほしい」と言い切るマユ。

……やはりこの作品は、ナオとサンゴ(マユ)の精神的成長を描くジュブナイルである、という切り口としても名作なのだと感じます。

まとめ

プレミア価格となり手の出しにくい本作ですが、90年代ジュブナイルが好きな人には直撃すること間違いなしです。

……アーカイブスとかで出てくれませんかね?